――ヤムナの大きな特徴である<骨に直接アプローチする>ことのメリットを教えてもらう企画の第5回。今回は「呼吸」について、ということですが?
鈴木:身体機能の中でも特に重要なことの一つ、それが呼吸です。そもそも肺自体には、空気を出し入れする機能は備わっていないことはご存知ですか?
――えっ、本当ですか?ヤムナのワークを行なう時も、プラクティショナーが「肺を大きく膨らまして!」という指示を出しますよね。当然、肺が機能して空気を吸い込んでいるものと思っていました。
鈴木:換気を行うためには、別な器官が肺に働きかける必要があります。その役割を果たすのが横隔膜と胸郭による呼吸運動です。横隔膜は胸郭の下に張られたように位置する膜状の筋肉で、全体としてはドームのような形をしています。収縮すると中央部が腹腔側に下がって平坦になります。そうすると胸腔ならびに肺の圧力が下がり、外気が流れ込む仕組みになっているのです。
――自分の意思で肺を膨らませているつもりでしたが、それは横隔膜を収縮させた結果、ということなのですね。
鈴木:横隔膜が緩んで元に戻ると、胸腔内の圧力も上がり、肺の中の気体は外に排出されるのです。その横隔膜の正しい上下運動を上手に行えていない人を多く見かけます。その人の癖によるものですが、典型的な悪い姿勢や動きは次の3つになります。
●首と肩をすくめる
●背中をそらせる
●肋骨を開きっぱなしにしている
それぞれ、肺を大きく膨らませることができない、横隔膜を充分に緩めきれていないということの原因になります。
――再確認ですが、呼吸を大きくした方が良い理由は?
鈴木:ご存知のように、呼吸は、身体に酸素を取り入れ二酸化炭素を外に出すという、生きていくための根幹ともいえる働きをしているわけです。酸素と二酸化炭素の換気、調整のバランスが崩れると、次のような症状の原因になります。
●緊張が抜けない
●回復力の低下
●自律神経の乱れ
●質の良い睡眠がとれない
――では、良い呼吸をするための具体的なヤムナのワークを教えてください。
鈴木:ヤムナのワークは、どのメソッドにおいても、呼吸を大きく行うことを意識させるものになっていますが、直接的に呼吸機能の向上に役立つワークは、「胸郭のワーク」です。前後、左右、肋骨に直接アプローチするメソッドです。
ボールに乗っている場所に対して、肺を膨らませて胸郭を広げ、内側からと外側から肋骨に圧をかける→息を吐く時には、元に戻す。
自分の癖で、動きが悪くなっている場所に対しては意識的にワークを行い、肋骨を広げたり元に戻したりという正しい動きを身体に覚えさせるようにしてください。「胸郭のワーク」をマスターして、肋骨を360度開放し、正しい呼吸を身につけましょう。ぜひ実践してみてください。