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24.07.29

<ヤムナと私 #4>「ヤムナは、身体の細部まで気づきを与えてくれる魅力的なメソッドです」米沢唯(バレエダンサー)

ヤムナに出会って、その効果に魅了されている人がたくさんいます。<ヤムナと私>第4回は、バレエダンサーの米沢唯さん。クラシックバレエ、ダンスへの思い、そしてヤムナについて話を伺いました。
ヤムナイラスト
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illustration_JAM gravity interview_Takefumi Ishiwatari text_Ken Ishida 

新国立劇場バレエ団のプリンシパル、伸びやかな踊りと繊細な表現力で多くのファンを魅了し続けている米沢唯さん。日々のハードなレッスン、舞台での身体意識、そして日常の中で実践しているヤムナについての話は、トップダンサーの研ぎ澄まされた感性を感じさせてくれる興味深いものばかりです。

Q1

先日、新国立劇場で「ラ・バヤデール」を観ました。ストーリー、音楽、舞台美術、構成など、本当に素晴らしい舞台。その中でも、米沢さんの踊りの美しさには感動しました。身体のしなやかさ、躍動感、流れる動きなど、喜怒哀楽の表現力にも圧倒されました。人間の身体をここまでコントロールして動かせるのか、というのが正直な感想です。

米沢

ありがとうございます。何かを感じていただけたなら、とても嬉しいです。

Q2

身体の隅々まで、緻密に意識が伝達されて踊っている印象を持ちました。
顔の表情、手の指先から足の指先まで、美しく踊るために、身体のすべてのパーツに意識を持っていっているのですか?

米沢

いえ、何も考えていない、という感覚に近いのです(笑)。身体の細かい場所に意識を持っていくのでは、動きが追いつかないということだと思います。身体全体を感覚的に捉え、表現したい感情的なものを大切にして踊っています。

Q3

舞台を観ていると、身体への負担が大きいのではと思いました。かなりの体力を必要とすると思いますが、何か特別なトレーニングもするのですか?

米沢

毎日午前10時から11時15分まで、クラスレッスンがあります。基本的に団員全員が参加し、クラシックバレエの基礎の動き、身体作りをします。毎日欠かさず基礎練習をすることで、舞台上で、その都度動きを考えなくても踊れるような感覚になるのです。このレッスンの後、11時45分から午後5時30分まで、リハーサルです。ずっと踊っています。それが、ほぼ毎日のスケジュールですね。長年続けていますが、常に新たな発見があります。ずっと「自分の踊りを探している」という言葉が当てはまると思います。それが楽しみでもあります。

Q4

それだけハードに踊り続けると、コンディションを維持するのが大変かと思いますが?

米沢

バレエというのは、トウシューズもそうですが、普通に人間が立つ状態より一つ超えた次元で「反自然」な状態を作り、精神性を見せるようなところがあります。バレエは、日常ではできないような身体の動き、美しさを目指している芸術表現だと思います。ですから、股関節、膝、足首のひねりなども、どうしても無理をするので、ケアは重要です。コンディショニングとトレーニングの融合として、ピラティスやジャイロをやっています。そして、もちろんヤムナも。

Q5

ヤムナを始めたきっかけは?

米沢

以前、首藤康之さんと共演させていただいた時に、首藤さんが「足の動きは良いけど、上体はもう少し厚みが出て、もっと呼吸が入ると良いよね」という話をしてくださって。その舞台が終わった後、首藤さんがわざわざヤムナスタジオに連れてきてくださったのです。2017年のことです。

Q6

一度体験して、その後はずっとヤムナを続けるようになったということですか?

米沢

最初にヤムナボディローリング(YBR)のグループレッスンを受けました。その後、毎週行われているフットのグループセッションに参加するようにもなりました。今は本番の前後にプライベートセッションを受けて、全身のバランスを整えてもらうことが多いです。

Q7

セッションを受ける以外に、ご自分でもヤムナを実践しているのですか?

米沢

もちろんです。パールボールとブラックボールは、いつも持ち歩いています。新国立劇場以外での仕事にも持参するので、現場では「ボール屋さん」と呼ばれたりして(笑)。主に背中、腰、首、手のワークをやります。それ以外には、フットウェイカーも使っています。足裏の外側、中央、内側という基本のルーティンでワークをやります。フットウェイカーは、自宅と稽古場の両方に置いてあります。フェイスもやってもらったことがあるのですが、すごく良いと思いました。やった後は、目が開いて顔が小さくなりますよね。最近はフェイスをやるまでの時間の余裕がなくて、残念です。

Q8

普段、どれくらいの頻度でヤムナを実践しているのですか?

米沢

 常に持ち歩いているくらいですから、必要な時は、いつでもという感じです。公演中は、袖と楽屋に常備しています。

Q9

特にお気に入りのワークはありますか?

米沢

ブラックボールを使うワークは、よく実践します。本番の舞台ではどうしても力が入ってしまうので、足の裏がツリそうになることがありますが、そういう時は、すぐにブラックボールを使ってふくらはぎをほぐします。普段行うワークの中では、背中のワークが好きですね。これをやるとぐっすり眠れるので。夜寝る前は、ヤムナメソッドをやる時間と睡眠時間を天秤にかけて、二つがせめぎ合いになり究極の選択に迫られます(笑)。どちらも大切で、どちらの時間も確保したいです。もう一つ、バレエダンサーは、足首、足裏のケガの可能性が高いので、フットウェイカーは本当にありがたいツールです。

Q10

ヤムナをやって、どんな効果を実感していますか?

米沢

ケガの予防は常に意識していることなので、ヤムナメソッドは、そのことに関して、大いに効果を発揮してくれていると思います。また、個別のメソッドについては、胸まわりのワークは、かなり効果を感じています。続けることで、より肋骨を広げることができるようになったので、呼吸も大きくなりました。先日、採寸をしたら、5年前より胸まわりが5cm大きくなっていました。より楽に踊れるようになったので、踊りの質も変わったのではないかな。

Q11

ヤムナメソッドの魅力はどんなところにありますか?

米沢

ヤムナは、身体の細部まで気づきを与えてくれます。私は踊る時は、感情表現に重きを置いて身体をあまり意識しません。ある意味、ヤムナはその対極にあって、自分の身体に向き合って集中し、細分化していく行為です。身体のパーツについて、ぼんやりグラデーションだったものが、ひとつひとつ、はっきりと明確に色の名前を付けていくような感じになります。より感覚を研ぎすまして、私の踊りにフィードバックしてくれる要素があると思います。