――このシリーズでは「骨に直接アプローチする」ことのメリットをいろいろ紹介してきました。今回は手の不調に対して、効果的なワークを教えていただけるということですが。
鈴木:人それぞれ、身体の様々な部位の悩みごとを持っていますが、手に関する不調を相談してくる方も少なくありません。手の不調は骨に起因していることが多いです。手の骨は身体の表面から近い場所にあるので、対処法のワークをすることに関して言えば、ターゲットを定めやすいですし、アプローチすることによる効果も大いに期待できます。
――具体的には、どのような症状での相談が多いのですか?
鈴木:代表的な事例としては、手のこわばり、痺れなどにより、フライパンを持ち上げにくくなる、ペットボトルの蓋がうまく開けられないという症状が出るものです。痛みが伴う場合もあります。これは、手根管症候群が疑われます。手根骨の中央を通る神経が圧迫されて起きる神経障害の一種です。手根骨は手のひらの付け根の骨で、8つの骨で構成されています。この症状は女性に多く見られるますが、男性でも発症することがあります。主な原因としては、手根骨へのストレスの蓄積が考えられます。このような症状が出ていなくても、手は日常生活の中で常に酷使されているので、ストレスを蓄積して不調を抱える寸前の予備軍ともいえる人が多いのではと想像しています。
――どのようなワークをするのが良いのでしょう?
鈴木:基本的には手根骨を広げるようなアプローチが中心になります。ストレスを蓄積した手根骨の8つの骨は、内側に縮こまってこわばった状態になっています。それを解放するのが目的です。また、手のひらだけでなく連動する手首、肘、肩の位置もリセットすると、結果として手のストレスも軽減されるので、併せて行いましょう。
――具体的なワークを教えてください。
鈴木:今回紹介するワークは、フットウェイカーを使います。フットウェイカーは足の裏のワークのためのツールですが、手のひらにも使えます。イボイボの突起は「骨に直接アプローチする」ためには効果的です。メソッドの具体的な内容は下記になります。
●ヨガマットの上で四つん這いになります。
●肩の真下にフットウェイカーを置き、手のひらの付け根部分に圧がかかるように手首を乗せます。手首、肘、肩のラインは真っすぐにします。
●息を吸いながらウェイカーを押して腕を伸ばし、息を吐きながら肘を軽く曲げて体重をかけていきます。
●数回繰り返した後、今度は、手を内側に向けて同じ動作を行います。同様に、外側、手前側、合計4方向で繰り返します。そうすることで、肩を正しい位置にリセットします。この動きは、肩、肘、手首の連動性も高めます。


――手根骨のストレスを解放するだけでなく、手首、肘、肩の連動性を調整する動きが入るのは気持ち良さそうですし、肩もほぐれそうですね。手のひらは、付け根部分だけに圧をかけた方が良いのでしょうか?
鈴木:付け根だけでなく、手のひらの中央(中手骨)部分へのアプローチも行うとさらに良いと思います。広く刺激を加え、手のひら全体をほぐしていけば、痛みの軽減、症状の改善が期待できます。一連のワークは、指が引っかかるバネ現象が起きる「バネ指」に悩んでいる方にも効果があると思います。注意点としては、痛みがある場合には、さらなる炎症を起こす可能性があるので痛みの場所に直接圧をかけるのは避けた方が良いでしょう。