――サッカーは野球と同じく、日本人にとってポピュラーなスポーツです。プレー人口も多いと思います。今回取り上げるグローインペインで悩む人は多く存在しているのでしょうか?
鈴木:グローインペイン症候群とも呼ばれる症状ですが、痛みが出る寸前の予備軍も含めると結構な数になるのではと思います。以前、私はラグビーチームのトレーナーをしていたのですが、ラグビー選手の中にもこの症状が出る人はいます。キックをする選手の場合が多いですが。
――どんなことが原因になるのでしょうか?
鈴木:股関節を酷使したり、過度な負荷がかかることで起きる慢性的なスポーツ障害です。ボールを蹴る前の準備動作で、太ももを急激に大きく後方へ振りかぶる動作や、インパクト時のボールを引き寄せる内転の動きが関係しています。その激しい動きによって太ももの内転筋が緊張状態になり疲労しやすくなります。内転筋は、太もも内側にある5つの筋肉の総称です。
――内転筋というと誰でも知っている筋肉の名称ですが、1つの大きな筋肉だと思いこんでいました。5つの筋肉の集まりなのですね。
鈴木:骨盤と大腿骨や脛骨を繋ぐ筋肉で、股関節の安定や姿勢の維持に重要な役割を果たします。全体としては大きな筋肉なので、細かく認識するのが難しい側面があります。内転筋が縮んで緊張状態になると、大腿骨が内側に引き込まれて股関節や膝の動きがスムーズではなくなり、不自然な悪い使い方をすることになります。その結果、腰と膝に痛みが出たり、内転筋の付着部に慢性的な痛みが出るグローインペインになるわけです。
――では、グローインペインに対処するためのメソッドを教えてください。
鈴木:内転筋の緊張を和らげるワークを行いましょう。内転筋の緊張を和らげ、正しい長さに戻し、疲労を取り除くことによって痛みの軽減が期待できます。また、痛みが無い人にとっても、このワークを行うことでグローペインの予防に繋がります。特に筋肉の付着部である恥骨を丁寧に刺激することが大切です。ぜひ試してみてください。
<内転筋の緊張を和らげるワーク>
●使用するボールは、パールボールまたはシルバーボールを推奨します。
●うつ伏せの姿勢から両肘で上体を支えて浮かせる。右膝を90度に曲げて外側に開く。ボールは内転筋の付着部である恥骨の右側に当てる。
●左側の骨盤と腹部を持ち上げてボールに体重をかける。この姿勢のまま30秒〜1分間、大きく呼吸をして恥骨を刺激する。
●身体を少しずつ左側に動かして、太もも全体の約1/3の場所にボールを移動する。ボールに圧をかけながら大きく呼吸を3〜4回行う。
●再び身体を左側に動かし、太もも全体の1/2、2/3の場所でも同じようにボールに圧をかけながら大きく呼吸を3〜4回行う。
●膝の内側にボールを移動し、同じように圧をかけながら大きく呼吸を3〜4回行う。最後に膝を股関節から引き抜くように外側へストレッチして終了。
●左側でも同じように恥骨の左側にボールが当たるようにしてスタート。一連の同じ動きを行う。
内転筋の緊張を和らげるワーク


